御膳料とは？葬儀・法要の金額相場や封筒の書き方・お金の入れ方・渡し方

葬儀や法要を執り行う際、準備が必要となるもののひとつに御膳料があります。
施主として初めて法事を取り仕切る場合、御膳料とはどのような意味を持つのか、またどの程度の金額を用意すべきか迷うことも少なくありません。
僧侶に対する謝礼にはお布施やお車代など複数の種類が存在し、それぞれ異なる役割を持っています。

ここでは、御膳料の基本的な知識から、金額の目安、封筒の書き方や渡し方のマナーまで詳しく解説します。

 

御膳料とは食事を辞退された僧侶に渡すお金

御膳料は「おぜんりょう」と読み、法要や葬儀の後に設けられる会食に僧侶が参加されない場合にお渡しする金銭を指します。
本来、法事の場では僧侶をもてなすために食事の席を設けますが、僧侶の都合がつかないことも珍しくありません。

そのような時に、食事の代わりとして感謝の気持ちを形にするのが御膳料とはどのようなものかを理解する上で重要です。
ここでは、その意味や他の謝礼との違いについて詳しく見ていきます。

 

僧侶が会食に参加しない場合に用意する

葬儀や法事の終了後には、参列者や僧侶とともに「お斎（おとき）」や「精進落とし」と呼ばれる会食の場を設けることが一般的です。
しかし、僧侶が多忙などの理由でこの食事会を辞退されるケースも多々あります。
また、近年では会食自体を行わない（なし）という判断をすることもあるはずです。

そうした場合に、実際に提供するはずだった食事の代わりに「お食事代」として金銭をお渡しします。
地域や宗派によっては「粗飯料」という名称で呼ばれることもあります。

 

僧侶が会食に参加する場合は不要

もし僧侶が法要後の会食に出席し、親族や参列者と共に食事を召し上がるのであれば、御膳料を用意する必要はありません。
実際に食事でおもてなしをすることが、何よりの感謝の表現となるからです。
御膳料はあくまで食事の代わりとして渡す金銭であるため、食事が提供される場合には二重の意味合いになってしまいます。

したがって、僧侶のスケジュールを事前に確認し、会食への参加が可能であれば、この金封は不要となります。

 

読経への謝礼であるお布施との違い

御膳料と混同されやすいのがお布施ですが、この二つは明確に性質が異なります。
お布施は、読経をあげていただいたり、戒名を授与していただいたりすることに対する、ご本尊への感謝の気持ちを表す金銭です。
つまり、宗教的な儀式への対価としての側面が強いものと言えます。

一方、御膳料は僧侶個人の食事に対する配慮であるため、お布施とは別の封筒を用意して包むのがマナーです。

 

交通費として渡す御車代との違い

僧侶にお渡しする金銭には、御膳料やお布施のほかに「御車代」があります。
これは、僧侶が寺院から会場や自宅まで出向いてくださった際の交通費として渡すものです。
「車代」や「御車料」とも呼ばれ、実際に掛かった交通費の実費よりも少し多めに包むことが一般的です。

御膳料がお食事代であるのに対し、お車代は足代としての意味を持つため、僧侶が会食を辞退され、かつ出張してきてくれた場合には、両方を用意することになります。

 

御膳料として包む金額の目安

御膳料を用意する際に最も悩むのが、具体的にいくら包めばよいかという点です。
金額の相場は地域や寺院の格式、あるいは会食で予定していた料理の値段によっても変動します。
少なすぎて失礼になるのは避けたいものですが、高額すぎても相手に気を遣わせてしまうかもしれません。

ここでは、一般的に適切とされる金額の範囲や、状況に応じた判断基準について解説します。

 

一般的な金額相場は5,000円から1万円

御膳料として包む金額は、一般的に5,000円から1万円程度が相場とされています。
この金額は、実際に会食の席で提供される予定だった料理（仕出し弁当や懐石料理など）の価格を基準に考えると良いでしょう。

もし、高級な料亭などで食事を行う予定だった場合は、そのグレードに合わせて1万円程度を包むのが無難です。
逆に、簡素な食事を予定していた場合でも、最低ラインとして5,000円程度は包むのが礼儀とされています。

 

僧侶が複数名来られる場合は人数分を用意する

大規模な葬儀や法要では、導師を務める僧侶のほかに、脇導師として複数の僧侶が来られる場合があります。
その際、全員が会食を辞退されたのであれば、来られた僧侶の人数分だけ御膳料を用意しなくてはなりません。

渡し方としては、一つの封筒に全員分の合計金額を入れて「御膳料」として渡す場合もあれば、一人ひとりに個別の封筒を用意する場合もあります。
どちらが適切か迷う場合は、あらかじめ葬儀社や詳しい方に相談しておくと安心です。

 

地域の慣習やお寺との付き合いを考慮する

金額の相場はあくまで目安であり、住んでいる地域の慣習や代々続くお寺との関係性によって大きく異なる場合があります。
都市部と地方では相場感が違うことも珍しくありません。
そのため、まずは年配の親族や親戚、あるいは近隣の事情に詳しい方に相談することをおすすめします。
また、寺の檀家総代などに直接確認することも一つの方法です。
周囲の意見を取り入れることで、マナー違反を防ぐことができます。

 

御膳料を入れる封筒の選び方

現金をそのまま手渡すのはマナー違反であり、必ず適切な封筒や袋に入れて渡す必要があります。
しかし、市販されている金封には祝儀袋や香典袋など様々な種類があり、御膳料の袋としてどれを選ぶべきか判断に迷うこともあります。

基本的には派手すぎず、かといって不祝儀専用のものでもない、適切な形式のものを選ばなくてはなりません。
ここでは封筒選びのポイントを紹介します。

 

白無地の封筒を使用するのが一般的

御膳料を包む際は、郵便番号枠などが印刷されていない白無地の封筒を使用するのが最も一般的で無難です。
水引やのしが付いていないシンプルな封筒であれば、宗教や宗派を問わず使用できます。

二重になっている封筒は「不幸が重なる」ことを連想させるため弔事では避けるべきとされますが、御膳料は僧侶への謝礼であるため、そこまで厳密ではないという考え方もあります。
しかし、無用な誤解を避けるためにも、一重の白封筒を選ぶのが賢明です。

 

水引が付いた不祝儀袋を使う場合の選び方

地域や金額によっては、水引が付いた袋を使用することもあります。
その場合は、黒白または双銀の「結び切り」の水引が選ばれることが多いです。
関西地方など一部の地域では、法要の際に黄白の水引を使う慣習も見られます。

ただし、御膳料はお布施と同様に、悲しみの意を表す香典とは性質が異なるため、水引のない封筒が推奨されるケースも増えています。
地域の慣習に合わせて、適切な水引の有無や色を選ぶようにしてください。

 

市販の封筒を購入できる場所

御膳料に適した封筒は、文房具店はもちろんのこと、スーパーやコンビニエンスストア、100円ショップなどでも手軽に購入することができます。
店舗によっては、あらかじめ表書きに「御膳料」と印刷された専用の封筒が販売されていることもあります。
急な法要で準備に時間が取れない場合は、こうした印刷済みの封筒を利用しても失礼にはあたりません。

時間に余裕があれば、書道用品店などで質の良い和紙の封筒を用意するのも丁寧です。

 

御膳料の封筒への文字の書き方

封筒を用意したら、次は表書きや裏書きを記入します。
書き方にも決まった作法があり、使用する筆記用具や文字の配置などに注意が必要です。

近年ではサインペンなどで済ませるケースも見受けられますが、正式なマナーに則った書き方を心得ておくことは、施主としての品格にも関わります。
ここでは、恥をかかないための文字の書き方について詳しく解説します。

 

濃墨の筆または筆ペンを使用する

香典では「悲しみの涙で墨が薄まった」という意味を込めて薄墨を使いますが、御膳料やお布施は僧侶への謝礼であるため、濃い黒色の墨を使用します。
毛筆を使って書くのが最も正式ですが、扱い慣れていない場合は筆ペンを使用しても問題ありません。
ただし、ボールペンや万年筆は略式すぎるため避けるべきです。

書体は読みやすい楷書が基本であり、崩しすぎた草書は避けます。
自信がない場合は、手本となる文字を下に敷いてなぞったり、文字が綺麗に印刷された封筒を使ったりするのも一つの手段です。
墨の色は必ず濃い黒を選びましょう。

 

表書きには御膳料と施主名を記す

封筒の表面、上部中央には「御膳料」という文字を縦書きで記します。
その下部中央には、施主のフルネーム、または「〇〇家」という家名を記入します。
名前は上部の「御膳料」という文字よりも少し小さめに書くとバランス良く見えます。
漢字の間違いがないよう十分に確認してから筆を入れることが大切です。

すでに表書きが印刷されている封筒を使う場合は、名前の部分だけを丁寧に記入すれば問題ありません。

 

裏書きや中袋には住所と金額を記す

封筒の裏面、あるいは中袋がある場合には、住所、氏名、包んだ金額を記入します。
これはお寺側が後で整理する際に、誰からいくら受け取ったかを把握しやすくするための配慮です。
中袋がある場合は、その表側に金額を、裏側に住所と氏名を書きます。

中袋がないタイプの封筒（白無地封筒など）を使用する場合は、封筒の裏面左下に住所と金額を記載します。
この際の「裏書き」や「裏書」も、表書き同様に筆や筆ペンを使って丁寧に書くようにします。

 

金額は大字と呼ばれる旧字体の漢数字で書く

金額を記入する際は、通常の漢数字（一、二、三）ではなく、「大字（だいじ）」と呼ばれる旧字体の漢数字を用いるのが正式なマナーです。
例えば、5,000円なら「金伍阡圓」、1万円なら「金壱萬圓」と書きます。
これは数字の改ざんを防ぐ意味合いが含まれています。

「円」は「圓」と書くのが通例ですが、略して「円」としても許容範囲です。
最後に「也」をつけるかどうかは地域によりますが、最近では付けないことも増えています。

 

御膳料として包むお札の扱い方

お札の入れ方にも慶事や弔事によって異なるマナーが存在します。
御膳料は僧侶への感謝を表すものであり、香典とは意味合いが異なるため、お金の入れ方には特に注意が必要です。

お札の向きや新札の使用可否など、細かい点ではありますが、相手への敬意を表す重要なポイントとなります。
ここでは、御膳料の入れ方に関する基本的なルールを説明します。

 

肖像画が封筒の表側に来るように入れる

お札を封筒に入れる際は、封筒の表側（文字が書いてある面）にお札の肖像画（顔）がある面が来るように入れます。
これは結婚式のご祝儀などと同様の入れ方です。

香典の場合は「顔を伏せる」という意味で裏向きに入れますが、御膳料は感謝のしるしであるため、向きを逆にするのがマナーです。
取り出したときに、すぐにお札の表が見えるように配慮することが大切です。

 

肖像画が封筒の上部に来るように入れる

お札を封筒に入れる際は、肖像画が封筒の取り出し口（上部）とは逆になるように入れるのが適切です。特に香典においては、肖像画を裏向きにし、上下を逆さまにして（肖像画が下になるように）入れるのがマナーとされています。これは、故人への敬意と、不幸が繰り返されないようにという願いを込めた作法です。

複数の枚数を入れる場合は、全てのお札の向きを揃えてから封入します。

 

新札ではなく使用感のあるお札を選ぶ

僧侶への謝礼であるお布施には、新札を使用しても問題ありません。香典は不幸を予測していたと受け取られかねないため旧札を用いるのがマナーとされていますが、お布施は感謝の気持ちを表すものなので、新札の方がより丁寧であるという考え方もあります。そのため、お盆や一周忌など事前に予定が分かっている法事では、新札を用意するのが望ましいとされています。

ただし、あまりに汚れや破れが目立つお札は失礼にあたるため避けましょう。 もし手元に新札しかない場合は、一度折り目をつけてから包むことで、配慮を示すことができます。

 

御膳料を包む袱紗の扱い方

御膳料やお布施を持参する際、封筒をそのままバッグやポケットに入れて持ち歩くのはマナー違反です。
必ず「袱紗（ふくさ）」と呼ばれる布に包んで持ち運びます。
袱紗には封筒の汚れや折れを防ぐだけでなく、相手への敬意を表す役割があります。

弔事や法要の場では、紫や紺、グレーなどの寒色系の袱紗を使用するのが一般的です。
ここでは、正しい包み方について確認します。

 

爪付きタイプの袱紗への包み方

爪付きの袱紗を使用する場合、まず袱紗をひし形に広げ、中央より少し右寄りに封筒を置きます。
次に右、下、上、左の順に角を折りたたみます。
最後に左側の爪を留めて固定します。

弔事の場では左開きになるように包むのが基本であるため、この手順を守ることが重要ですす。
逆の順番で包むと慶事（お祝い事）の包み方になってしまうため、十分に注意してください。

 

台付きタイプの袱紗への包み方

台付きの袱紗の場合も、基本的には爪付きタイプと同様の手順です。台の四隅にゴムなどがついている場合は、封筒をしっかり固定します。

台の色が慶弔でリバーシブルになっている場合は、弔事用の色（グレーや緑など）が表に出るようにセットします。弔事の場合、袱紗は右側を先に折り、次に下側、上側の順に折り重ね、最後に左側を折り重ねて左側が一番上になるように包むのが正しいマナーです。渡す直前まで袱紗に包んだ状態を保つことが大切です。

 

封筒を裸のまま持ち歩かないようにする

最も避けたいのは、封筒を裸のままカバンやスーツのポケットに入れて持ち運ぶことです。
これにより封筒の角が折れたり、表面が汚れたりする可能性があります。
袱紗を持っていない場合は、小さめの風呂敷や綺麗なハンカチ（地味な色のもの）で代用しても構いません。

大切なのは、金封を大切に扱い、礼を尽くして僧侶にお渡ししようとする姿勢です。

 

僧侶へ御膳料を渡す際の手順

御膳料を渡す際には、ただ手渡せばよいというわけではありません。
正式な作法に則った渡し方を行うことで、より丁寧な印象を与えることができます。
切手盆と呼ばれる小さなお盆を使うのが理想的ですが、ない場合の対処法もあります。

また、渡す際の言葉掛けも重要です。
ここでは、僧侶に対する失礼のない御膳料の渡し方について具体的な手順を解説します。

 

切手盆に乗せて差し出すのが正式な作法

御膳料を渡す最も丁寧な方法は、「切手盆」と呼ばれる黒塗りの小さなお盆に乗せて差し出すことです。
お盆に封筒を乗せ、文字の向きを僧侶側に向けて差し出します。
自宅での法要やお寺の控室など、落ち着いた場所で渡す場合は、この方法が推奨されます。

切手盆がない場合は、普通のお盆で代用しても構いませんが、直に手渡しするのは避けるべきです。

 

袱紗から取り出して渡す場合の作法

お盆が用意できない場合や、立って渡すような状況では、袱紗を使って渡します。
まず、袱紗から封筒を取り出し、空になった袱紗を折りたたんで手の上に置きます。
その上に封筒を乗せ、袱紗をお盆代わりにして差し出します。

この際も、封筒を直接手で持って渡すのではなく、袱紗というワンクッションを置くことで、礼儀正しい振る舞いとなります。

 

封筒の文字が相手から読める向きにして渡す

切手盆を使う場合も、袱紗を使う場合も、封筒の向きには注意が必要です。
自分から見て正面になるように準備していても、渡す際には相手（僧侶）から見て文字が正しく読める向きに回転させてから差し出します。

時計回りに180度回し、封筒の下部が相手側に向くようにしてから、「どうぞお納めください」といった動作でお渡しします。

 

感謝の一言を添えてお渡しする

無言で封筒を差し出すのは事務的な印象を与えてしまい、好ましくありません。
渡す際には、必ずお礼の言葉を添えましょう。
「本日は丁寧なお務めをありがとうございました」「お食事を用意できず申し訳ありませんが、どうぞお納めください」など、感謝と労いの気持ちを言葉にすることで、より心が伝わります。

形式だけでなく、心のこもった挨拶をすることが大切です。

 

御膳料をお渡しするタイミング

御膳料を用意していても、いつ渡せばよいのかタイミングがつかめずに戸惑うことがあります。
忙しい法要の当日は、時間が目まぐるしく過ぎていくため、あらかじめ渡すタイミングを想定しておくことがスムーズな進行の鍵となります。

基本的には僧侶の動きに合わせて、落ち着いて話ができる時間を狙うのがベストです。
ここでは、代表的な二つのタイミングについて説明します。

 

法要が始まる前の挨拶時に渡す

最も推奨されるタイミングは、法要が始まる前、僧侶が会場に到着された際の挨拶の時です。
控室などで挨拶をする際に、「本日はよろしくお願いいたします」という言葉と共にお布施やお車代とまとめて渡すとスムーズです。

最初に渡しておけば、法要後にバタバタして渡しそびれる心配もありません。
複数の封筒がある場合は、お布施を一番上にし、その下に御膳料やお車代を重ねて渡します。

 

法要が終わって僧侶が帰られる時に渡す

法要の開始前が忙しく、渡すタイミングを逃してしまった場合は、すべての儀式が終了し、僧侶が帰られる際に渡しても問題ありません。
着替えを済ませて一息つかれたタイミングや、帰り際のお見送りの時などに、「本日はありがとうございました」と感謝を伝えてお渡しします。

ただし、僧侶が急いでいる場合もあるため、手短に礼儀正しく渡すよう心がけましょう。

 

まとめ

御膳料は、葬儀や法要において食事を辞退された僧侶に対して、感謝の意を込めてお渡しする大切なお金です。
金額の相場は5,000円から1万円程度が一般的ですが、地域の慣習やお寺との関係も考慮する必要があります。
封筒は白無地を選び、濃墨で丁寧に表書きをし、袱紗に包んで持参するのがマナーです。

通夜や告別式、初七日、四十九日法要、納骨、初盆（新盆）、一周忌、三回忌などの回忌法要に至るまで、様々な場面で必要となる知識です。
また、神道などの他宗教でも「御食事代」などの名目で同様の配慮が必要となる場合があります。
大切な法事の場で失礼がないよう、正しい準備と手順を心がけましょう。

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